以前、「妖精」作詩:Yと「妖精(返詩)」作:BK という記事を載せました。
Yは地元の親友で、BKは僕です。
実は、地元の親友Yと同じくK、大学時代の親友Cと、僕の4人で、
毎月、同じテーマで詩を書いてみようという試みを始めたんです。
その、5月のテーマが「妖精」or「妖精さがし」でした。

今日は、Cの詩と、それに対する返詩としてKの詩を載せます。


「妖精さがし」
詩:C

風が吹き抜けるというよりは
冷たい空気がそこにあるような感じ
葉の隙間からは惜しみないくらいの木漏れ日
生きものの脈動が命から直接命へ伝わってくるような気がする

森の地面は大地と呼ぶほど大きくはない
でも、大地のみがそなえる豊かさがある
森の木々は大樹と呼ぶほど大きくはない
でも、大樹のみが放つ生命力がある

数え切れないほどの命がつながって 全部で大きな生きものみたい

一枚の落ち葉の裏側で 必死の戦いを繰り広げる虫たち
足もとには可憐な小さな花々
舞う蝶は優雅というよりも楽しげ
歌う鳥の声は季節のリズム

気づけば寝ぼけたたぬきが歩いている

あふれる命の美の中で 君の知らない誰かが微笑む
それは見えないのに、とっても美しくて、とっても愛らしいのがわかる

きっと感じ取ることしかできないものなのだろう
それは見るという行為を受け止めきれないくらい淡いから
静かに耳を澄ませ、ゆっくりと息をひそめ、大きく背中全体で感じるのだ

見えないからこそ伝わる美しさがあるのかもしれない
否、本当の美しさというものは目に見えないのかもしれない

そんな美しさを感じられた君は幸せだ

妖精はいつでも小さな美しさに気づける君のそばにいる

太陽が照りつけるというよりは
重たい空気がそこにあるような感じ
信号待ちの横断歩道には感情を持たぬ人の群れ
不信と不機嫌がコンクリートの街を乱暴に塗りつぶしている気がする

都会のビルは文明の粋と呼べるほど機能的ではない
むしろ、人類のかつての英知を偲びたくなる
都会の自動車は科学の勝利と呼べるほど誇らしいものではない
むしろ、人は遅さを求め始めているようにも見える

殺伐とした都会にあふれる
うそと欺瞞(ぎまん)
見栄と欲望
不信と不安

でも、実はそんなつまらない毎日にも生命は脈動している

足もとをみれば、アスファルトの上をせっせと歩くアリたち
わずかの隙間からたくましく顔をのぞかせる雑草は、力いっぱい花を咲かせている
青々とした街路樹は排気ガスの嫌がらせを気にもとめない
ふと空を見上げれば、青いキャンバスに流れる雲が自慢の絵を描いている

数え切れないほどの命が手を取り合って、みんなで大きく合唱をしているみたい

ほら、君の毎日を力強く謳っている賛歌が聞こえてくるだろう

聞こえないからこそ伝わる言葉があるのかもしれない
否、本当の応援歌は聞こえないものなのかもしれない

そんなやさしさを感じられた君は幸せだ

妖精はいつでも小さな声援に気づける君のそばにいる

声にならない声と聞こえない歌を聞くために
君の耳はあるんだぜ

目に見えない光と未だ見ぬ明日を見るために
君の眼はあるんだぜ

そっと耳を澄ましてごらん
聞こえるはずさ
君を励ます声援が

そっと眼を閉じてごらん
見えてくるだろう
妖精の微笑む顔が

つまらない日常につまらない顔をしてたらもったいない
つまらない日常にうんざりしてたらもったいない
つまらない日常だからこそ、もっと丁寧に妖精をさがさなくちゃ

君を讃える応援歌と君を見つめる妖精を
無視しないで

君の妖精は君のすぐそばにいるはずだから

頑張る君に
今日も精一杯の声援と
やさしい眼差しがむけられているよ

小さな声援に気づける毎日を
小さな美しさに気づける毎日を
そして、小さな妖精に微笑み返せるような毎日を



「妖精さがし」
詩:HAN-CHO(K)

「さがして見よっか」
という友人との間に
ふと生まれた軽い出来心が
今では立派に呼応し合う

忘れかけていた大切な感情
君が何かを信じている、ということ
だからそれを全力で信じてみるということ

そうすりゃ
例えば本物のサンタクロースだって
きっと素敵で無二のプレゼントを届けに来てくれる

そんな子供じみた
だけど僕が真理だと思うことは
これっぽっちも僕自身の物じゃなく
云うなれば、君達それぞれの信頼の集合体

枯れて行く草花
汚染されていく川海
道を踏み外す人々
それにすら気が付かない僕達
僕達以外の全ての生命体は
そんな僕達を可哀想だと嘲笑うか?
笑いも泣きもしてないんじゃないのか

枯らした草花
汚染した川海
道を踏み外した僕達
薄々気付いている僕達?
本当は痛い程気付いている僕達

抜け出せない生命体の負の連鎖
解決法には社交的なエゴとエゴが
始まりも終わりもしない戦いを確立させる

「さがして見よっか」
と思えた時
既に見つけていたんだよ
僕と君との間に
たとえば妖精の仕業としか思えないような
小さな確かな贈り物
消えることのない僕の中に生きる君