理不尽な病気と闘う友人に贈る

それでも続く物語へ

雨の季節だっていうのに
嫌んなるくらい晴れ渡ってて
蒸し返る道路と日差しの間で
君は白昼夢に眩暈する

そういえばこの季節ってのは
意外に空気が澄んでるんだっけ?
重みのある真っ白な雲は
また嫌んなるくらいに自由だ

理不尽なほどに急な夕立が
その後に綺麗な虹の夕焼けを用意してること
信じられないほどに僕らは“近眼”になった
それはきっと、長い間を狭い部屋で
TVばかり見て育ってきたからだろう

遠くにあるはずの過去を
顕微鏡で見ているような距離感
そういう現実を僕らは受け止めて
焦点の合いそうもない日々を
ぶれながら歩いていく

そもそも僕が君に
贈れそうなものなんて何も無い
七夕の季節だったなら
短冊にしたためることくらいは出来たかもしれない

棋聖が既に詰んだ展開だとしても
知らん顔で物語は続く
どれを選んでも悪手と知っていながらも
次の一手は打たれなくてはいけない
投げ出せないし、投げ出せないから、
明後日あたりに巡り来る好機

水面をすいすいと運ばれる一片の笹舟
横目に見ながら僕達はせわしく犬掻き
それでも物語は河口へと流れる
君だけが知る浪漫を乗せて

いつの間にか雨はやんで
清々しい夏の午後
明日には熱波が押し寄せて
ずぶ濡れの今日を忘れる
何も知らずに生まれてきたけど
大人になっていくことは
やはり忘れていくことかもしれない
知らなくてはいけないことなんて
何も無いのかもしれない

それでも続く物語に
目一杯の愛情を
それでも続く物語に
飛び切りの友情を
それでも続く物語に
特別な戦場を
それでも続く物語に
幸せな群青を
それでも続く物語に
君だけの頂上を