『夜明けの旅人』

夜が明けたら
朝日に向かって
僕らは旅に出よう
春が来たら
草花を摘んで
君に王冠を贈ろう
貴方に会えたら
日が暮れるまで
語り過ごそう

陽気な季節など無かった
きっとこの先も選べない
夜の闇の深さを
どれほど不安に思っただろう
玄冬の凍える窓を
膝を抱えて眺めた日々を
閉ざされた冷凍庫の哀しみを
忘れた様にここに記そう
決して忘れない為に

このフィクションの世界は
痛みだけがやけにリアル
虚構が映さない影を
一人一人が背負っている
僕に失望したり
時に僕を憎みさえするのは
他の誰でもなく
僕だったりする
時に僕を想ってくれる
他人だったりする
いつかこの傷跡が
オブラートの原料になる為に
自分自身を許してあげたい

何が幸せで不幸せか
何故生まれてきたのか
何のために生きるのか
何ゆえ死んでいくのか
少しずつ分かりかける
それは、
生命に刻まれた
真実を読み解く作業
忘れてゆく速さに
必死で抗うような営み
間違いも後悔も
過ぎ去った青春も
何度も蘇生してみせる
過去を絵具に変えて
未来を塗り替える
そうやって今を築く

朱夏に差し掛かり
また落とし穴に嵌る
受け身を覚えたから
大怪我はしない
痛くても我慢出来る
痛い顔は見せられない
そんなとき本当は
手を当ててくれるだけでいい
額の汗を拭いながら
一歩千金の一歩を探す
下手な譜面の軌跡だって
誰かの道標になればいい
僕がつまづいた場所で
同じように転んだ子どもたちが
より強く立ち上がれるように

僕たちの時代は気忙しい
誰かの改善がもたらした便利が
他の誰かの価値ある不便を奪う
想像する時間を創造することも
創造する時間を想像することも
速すぎるメトロノームのせいで
赤を切るか青を切るかのように
切迫してしまう
心拍数を整えて街を歩こう
美しくない街並みを
月は物言いたげに照らす
詩心のない街角を
電灯が物憂げに照らす
錦秋は白い靄の彼方で
最後の時を悠然と待っている

時計の針は
確実に回るけれど
残された時間を
計る時計はない
ただ今を伝えるだけ
知らないままに進もう
難しいから楽しいんだろう
挫折のピースのないパズルでは
成し遂げる甲斐が無いだろう

夜が明けたら
荷物を背負って
僕らは旅に出よう
茹だるような草いきれの道を
お気に入りの靴で踏みしめて
そんな気持ちで目覚めたら
太陽は朱色に燃えている
心行くままに
日陰を選びながら
陽射しの道を歩もう
絶望の深い谷を越えて
あの日より輝く日々の中を